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2015年9月2日水曜日

Until Dawn-惨劇の山荘- それは存在そのものが惨劇

タイトル通りである。

ようやく、Until Dawnのチャプター10をクリアした。俺の選択の結果、生き残ったのは二人だけだ。
あまりに少ない。犠牲が多すぎる。
もっと賢い選択があったに違いない。

だが、俺にはこのゲームをもう一度プレイしようという意欲が残っていない。

そもそも、ゲームをプレイし始めたときはもっと早くに終わるはずだった。あの頃の俺はもっと積極的だった。
だが、プレイが進むにつれ、やる気がぐんぐんと目減りしていった。
正直、手をつける気力もなくなっていたのを義務感から終わらせたものだ。

今はただただ沈鬱だ。やるせない。
この気持ちを整理したくてキーボードを叩いている。
わざわざ悲しみを他人に見せつける必要などないと言われれば、確かにそうかも知れぬ。
だが、書き殴らねば俺の気が済まないので書く。

この記事はゲームの内容にも触れる。ネタバレなどが気になる方は注意してほしい。


●はじめに

断っておく。この記事は開発者を糾弾するものではない。
むしろ、俺はこのゲームの開発者には畏敬の念を抱いている。この体験を与えてくれたことにも感謝している。
操作について若干の不満があった以外はネガティブな印象はない。
では何が俺の意欲を殺いだのか。
彼らの産み出したゲームは日本に来てはいけなかったのだ。

●すべては黒の彼方

タイトルに惨劇の山荘とある通り、このゲームは人が死ぬ。それも凄惨に。

……多分。

そう、多分だ。なぜなら、俺は真っ黒い画面しか見せられていない。何が起きていたかは実のところ理解できていない。

一例を挙げよう。
残虐な殺人鬼の策略により、縛り付けられた男に丸ノコギリが唸りを上げながら迫っていく。絶体絶命。
次の瞬間、モニタは真っ黒になる。聞こえてくるのは悲鳴と惨劇を予感させる音だけ。登場人物たちの姿が戻ってきた時にはもう場所からして変わっている。
真っ黒い画面の向こうで一体何が起きていたのか。俺には知る由もない。

いや、俺だって人並みには想像力があるつもりだ。
回転する丸ノコの進む先に逃げられない人間がいればどうなるか。目を背けたくなるような悲惨な結末が待っているだろう。それぐらい予測がつく。

だからと言って見れなくていい理由にはならない。

実はこの惨劇は後々、大きな意味を持つ。
とある人物の妄執と狂気が垣間見える一幕だからだ。それが黒く塗りつぶされている。
これほどバカバカしいことはない。続ける意味を失った瞬間だ。

このブラックアウトは物語が進み、死が身近になるに連れて頻発するようになる。
登場人物の多くは真っ黒い画面の向こうで死んでいく。プレイヤーはその最期を目撃することを許されていない。

我々の目が塞がれるのは死の瞬間だけにとどまらない。

炭鉱の中でドアを開けたら真っ黒だったこともある。天井を見上げたら真っ黒だったこともある。

音声から登場人物の遺体があったことは見当がつく。わざわざ伏せられているということは無残な状態だったのだろうと勘ぐることはできる。詳細は謎のままだ。我々は閲覧が許可されていない。

21世紀にもなって墨塗り教科書みたいな真似を目の当たりにするとは思っても見なかった。

●日本の限界

そして、絶望的なことがある。このゲームはCEROがZ指定なのだ。
この規制は青少年に配慮した結果ではないということだ。

規制が何を理由に施されたものなのか。俺には分からない。
もしも、お節介な自主規制だったとしたら……業界の将来を思うと暗澹たる気持ちになる。

規制するのは百歩、いや、外宇宙に飛び出すほど譲って認めたとしよう。

だが、問題はまだ残っている。今回のやり方はあまりに雑で見るに堪えない。

決定的な瞬間を見れないまでも、別の方法で何が起きたのかを提示してくれれば、まだ諦めもつくしわかりやすい。例えば凄惨な死体を直接表示することはできなくとも、目撃した生存者の表情が見えたならばまだ感情移入もしやすいだろう。

だが、現実はただ画面が黒く塗りつぶされているだけだ。

なるほど、登場人物は悲鳴を上げている。悲惨なことになっている証左だろう。愚鈍な俺でもそれぐらいはわかる。
でも、俺が知りたいのは凄惨か否かじゃない。何が起きているかだ。
悲鳴を挙げられても何も伝わってこない。状況は見えてこない。

見えてはいけないものは隠せばいい。
そんな表現を冒涜するような発想の人間がこのゲームに携わった。悲劇と言う他はない。

俺にはなぜこんな悲惨な状況になったのかがわからない。ただ、これがこのゲームを日本国内で販売する唯一の手立てなのだとしたら。それはつまり、Until Dawnというゲームを受け入れられるだけの素養が日本という国にはないということだろう。

Until Dawnは日本で発売されてはならなかった。俺がそう思う由縁である。