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2025年1月25日土曜日

格闘ゲームを知ったかぶろう・攻撃編

どうも、令和の格闘ゲームブームに乗りたい男、虚木零児です。

すいません、嘘です。

むしろ、昨今の隆盛から小説、マンガ、アニメと言った他メディアでの格闘ゲームの需要が上がるのではと思い立ち、格闘ゲーム素人共に向けて教材を売り付けようと考えました。

……言葉を選ばすに言えば、前回の続きですね。頼むぞ、出版業界。

注意書き

本記事は(格闘ゲームを題材に作品を書きたいけど、よく知らないんだよなぁ……)という人の一助になることを目的としております。現存する格闘ゲームの攻略を話すものではなく、横断的に見ることで「格闘ゲーム」というジャンルの傾向を掴む程度ですので、プレイ・攻略の情報はほとんどありません。

◆攻撃の分類分け

格闘ゲームと言えどもコンピューターゲームには違いありません。構造上、プレイヤーがハードウェア――所謂、コントローラー――を操作すると、それがゲーム内のキャラクターの動きとして反映されるという構造そのものは変わりません。

"格闘"とついたジャンル名が指し示す通り、素手、武器問わず接近しての攻防を描くものであり、原則、登場キャラクターの攻撃手段は多彩な作品が多くなります。結果、プレイヤーが攻撃を使い分けられる必要があり、それを操作に落とし込む際に攻撃については整理・分類がされています。ここで一度、既存ゲームの傾向を見てみましょう。

現状は以下の2種が主流と言って差し支えありません。

種別分類

文字通り種別による分類です。多いのは拳や腕を使った攻撃であるか、脚を使った攻撃であるかで区別するパンチとキックなどが有名ですね。何と何で分けるかはゲームの題材に左右されるので、サムライが出てくるゲームでは斬りと蹴りだったりします。

強度分類

攻撃の強弱による分類です。破壊力、衝撃、与ダメージ……言い方は何にせよ、当たったら大変なことになりそうなものを強い、痛いだろうけど死にはしなさそうなものを弱いとする考え方です。ボクサーのストレートだと死にそうだけど、ジャブならギリギリセーフかも……みたいな話です。経験はないですがセーフってことはないでしょうね。一般人を殴ったボクサーのほうは(社会的に)無事じゃない、みたいな話もありますが今回はしません。

いかがだったでしょうか?

「そんなこと言っても、所詮ゲームなんだからダメージもモーションも製作者次第なんじゃないのか」と言われるとそれはそう。ですので、あなたが小説や漫画に架空の格闘ゲームを登場させて、ロシアンフックが弱攻撃か強攻撃かは匙加減の問題です。実際のゲームによってはキック攻撃で出る可能性すらありますから、それだけで問題にはなりえません。

◆分類の実例

ウダウダウダダ言葉で言われてもわからないよ、という向きもあろうかと思うのでここからは実在のゲームの話も織り交ぜていきます。

種別分類作品

有名かつ代表的なのはバーチャファイターです。開発中らしい最新作ではどうなのかは知りませんが、既存のバーチャ攻撃ボタンは2つだけ。区別としてはパンチとキックのみ。潔いですね。このあたりの詳しい開発秘話は記事があるので、皆さん読んでおいてください。宿題にします。

さて、これが鉄拳になると、手と足にそれぞれ左右を掛け算して四ボタン(LP、LKとRP、RK)使うようになります。同じくナムコのソウルキャリバーは武器攻撃を振りで分けて三ボタン(横振りA、縦振りB、蹴りK。ガードGがあるのでコンパネ上は四)となります。

強度分類作品

これは最近のゲームには多いタイプでグラブルヴァーサスとかドラゴンボールファイターズとかアルカナブラッドとか、ちょっと古い所ではMVC3とかメルブラ、エヌアインとかもそうでした。最近ちょっと話題になってた気持ちだけ最新ゲームのなんとか文庫ファイティングなんとかックスもこのタイプ。このブログでもはるか古の時代にちょっとだけ触れた形跡が残ってる恋姫†演武(当時は夢想だったかも)もこれでしたね。確か。

え? 特殊攻撃ボタン? 特殊なんだから仕方ないだろ。詳しい話は後述しようと思いますが、多分、格闘ゲームというものが洗練されていく中で出来上がったニュースタンダードだと思ってしまって差し支えないと思います。その分、格闘ゲームを理解してない人が手を出すと地獄見ます。な?

分類併用作品

さて、ここまで読んで気付いた人もいるかも知れません。古めの有名タイトルの類が出てきいないということに。例えば最新作が絶好調なストリートファイターシリーズであるとか、スピーディなゲーム性で今日のコンボゲーに多大な影響を及ぼしたヴァンパイアシリーズであるとかはどこに行ったんでしょうか?

この2つはどちらもパンチ・キックの種別分類に弱中強の強度分類を併用しています。先に上げた例と比較するとわかりますが、バーチャと違ってパンチ攻撃用のボタンが3つもあるし、グラブルヴァーサスと違って弱攻撃もパンチとキックで打ち分けが可能。

実の所、強度の段階を変えたり、種別事に強度分けを変えたりなどを組み合わせが違うだけで、かなりのゲームがこのタイプです。KOFは強弱の二段階、サムスピ零とか月華みたいに斬り分類は強度区別するけど蹴りはしてないタイプもありますし、リアルバウト餓狼伝説では強攻撃はPもKも一緒にされています。ギルティギアだって、パンチ、キックは一本ですが武器攻撃の弱(スラッシュ)強(ハイスラッシュ)が分けられています。え? ダスト? 

……なんだろうね、アレね。

余談:どれでもないモノ

繰り返しにはなりますが、基本的に上記に当てはまらないゲームはほとんどないです。あったとしてもマイナー気味なので、読者の知識にない可能性が高い。何なら、レバーを倒した方向に攻撃する武力~BURIKI ONE~が若干知名度が高いだけで、コイツさえいなければ十割だった可能性すらある。いや、武力はギリギリ有名でないか……?

 参考資料:「武力 ~BURIKI ONE~」 全キャラ技表 - SNK PERFECT DATABASE

冗談はさておき。

このことからわかる通り、令和のこの時代になっても、格闘ゲームの操作やボタン配置については絶対の正解や結論といったものはありません。ゲーム性という根本的な部分はもちろんですし、プレイするゲームハードのコントローラーのハードウェア的な制約から実質ボタンが決まっている場合もあります。例えば、マーベルVSカプコンは最初、PK×弱中強の六ボタンだったものが、続編の2で弱強の四ボタンになりました。初代から2で試合で扱うメインキャラクターが2人から3人に増えたことで、パートナーを動かす専用のボタンが必要だと判断されたのでしょう。単純に2ボタン増やして8ボタンにするという手もなくないでしょうが、巷にはすでに6ボタン筐体が普及しており、流用するためには安易には増やせない。そうなると、攻撃ボタンが削られてしまうのも無理はない……かも知れない。

正直に言えば、実際のところはわからないです。個人的には6ボタンぐらいが操作の限界かな? と思っているので開発者の人が「ハードウェア制約関係なしに8にする選択肢はありませんでした」と言っても疑いはしません。事実、家庭用に移行した、3では種別分類なくし攻撃の分類整理し直したりされてますからね。

◆格闘ゲームのちょっとした歴史

さて、実際の分類をざっくりとわかった所でこれらの発展についての簡単な歴史を振り返りたいと思います。

「一番最初の格闘ゲーム」とかぶち上げると諸説あって紛糾するんですが、昨今の格闘ゲームのイメージ土台を作り上げたモノと言えば? はおそらく、ストリートファイターだと思います。数多くのゲームが生まれ、いわゆるコンボの長さ、あるいは空中機動の実装、固有のシステムなどなど、全く違うプレイフィールのものも多いですが、一番の土台、基礎の基礎が似通っているからこそ、格闘ゲームというジャンルで呼ばれている。そう思います。

これには格闘技戦闘を異なるアプローチで表現したバーチャの動きが長らく止まっていた影響は少なからずありそうですが……

こうすると、格闘ゲームは最初の時点でパンチとキックの2種に分けた後、そこから更に弱中強の3段階の強弱をつけた併用分類型から始まったことを意味します。簡単な状態から始まって技術の発展やコミュニティの熟練によるゲームの難度が上がってボタンが増やされたのではなく、最初からボタンが多い状態でした(感圧式ボタンから目を逸らす)。

「6個なんて多いうちに入らないだろ!」みたいな人もいるでしょうが、こと格闘ゲームにおいて、最低限必要なボタンが6はかなり最大に近い。パリィ、インパクトのボタンで議論が交わされるスト6ですが、あれらも同じ強度のボタン同時押しで出せはするんですよ。まあ、それだと不都合があったりするからこその議論ですが……

格闘ゲーム全体として見た場合、後発の作品ほどゲージ自体の存在が増えたり、システム的な行動が増えて、できることが多くなっています。当たり前の話として、スト6で追加されたインパクトやラッシュみたいなドライブシステムは昔ありませんでした。さらに遡れば2の頃はダッシュもステップもなかったんです。本当に。

でも、攻撃に使うボタンの数は減っている。不思議なこともあるもんですね。

物理的にはプレイヤーからシステムに向かって行える命令が減っています。スト2だったら1から6のオンオフが来るけど、鉄拳では1から4しか来ない。あるボタンが押されると、それに対応するアクションをしますと作った場合、スト2だと6種類のアクションが割り当てられるけど、鉄拳では4つしかない。今回ネタにした攻撃ボタンの話に合わせると、技の数が減るんですね!

……ホンマかいな。鉄拳もバーチャもコマンドリストで見るとすごい量あるが?

◆ボタンが減ると理論が変わる

さて、ようやく今回の記事の本題です。ボタンと操作、技の対応がゲーム性を決めるので、ゲームの方向性に合わない操作を描くと強烈な違和感が出ます。

バーチャがスト2よりも少ないPK2ボタンで多彩な技が出せるのは、ストリートファイターとは全く異なり論理でコマンドが定められているからです。

例えば、牽制用の素早いジャブ、相手の腹を狙うボディブロー、直撃すればただでは済まない強烈な踏み込みストレートを持つキャラクターを作ろうとした場合ですが、パンチボタンが三種類あるストリートファイターならば、それぞれ弱中強に割り当てるだけです。

ところがパンチを1ボタンしか用意していないバーチャではその方法は使えませんし、それより多い鉄拳だったとて、ボタンに割り当てられるのは最大で2つ。1技は対応するボタンが存在しません。さらに言えば、鉄拳は腕と左右で対応させているので、今回の場合もすべての技を全部同じ腕で打つと、使えるボタンはRPかLPのどちらかのみ。

じゃあ、バーチャはどのようにして技を確保しているのかと言えば、レバーとの組み合わせなんですね。レバーが判別できる八方向のほぼ全てに技が割り振られている。今回の例で言えば5Pでジャブ、6Pでストレート、3Pでボディブローといった具合になります。このコマンド配置で本職のプレイヤーが納得するかはわかりませんが。

つまり「レバー斜め下+中P」みたいなコマンドはあまり見ません。ボタンで技を使い分ける強弱分類系のゲームで更にレバーとの組み合わせが要求されることは少なく、ましてやそれをわざわざ上下左右ではなく、斜め下に配置する必要なんてあまりないんですよ。

え、ヘルスタブ? 僕も全く無いとは言ってなくないですか?

逆に、強弱分類のないゲームでは同じ技で幅が生みづらいです。スト6のルークは214+P操作でフラッシュナックルという技が出ます。この技は腕に力を込めて踏み込みながらパンチを繰り出す技ですが、弱中強でモーションが変化します。弱はアッパー気味に、中は胸あたりを狙ってまっすぐ、強は振り下ろし気味のパンチ。

同じシリーズのリュウが種別分類ゲーのスマッシュブラザーズに出張した時は、ボタンを押す時間で技の強弱を区別していました。一見するとフラッシュナックルも同様の扱いで実現できそう――それぞれ振りかぶりモーションが違う点に目を瞑れば――に思えて、ルークのフラッシュナックルはそれ自体がホールド対応技のため、弱、弱ホールド、中、中ホールド、強、強ホールドの六段階に分割が必要。加えて、ジャストリリースがあるので……ははは。

バーチャはともかく、鉄拳はレバーコマンド技も多いのですが、ルークのフラッシュナックル的な技を実装するのであれば、アッパー、ストレート、打ち下ろしでそれぞれ入力自体を変えると思います。仕方ないやん、そういうゲームじゃないんやって、鉄拳は。LPRPで誤魔化そうにも、ルークは全部同じ腕ですしね。それはルークが悪いよ、ルーーークが。

そもそも、ホールド版◯◯は短押し版よりは閾値分だけ成立が遅くなります。同時に短押し版もボタンリリースまで成立しないので、多少は遅くなる可能性が高い。この閾の値を短くすれば使い分けそのものが難しくなり、長くすると今度はホールド成立が遅くなって技の価値が下がってしまいます。スクリューパイルドライバーの弱は成立範囲が広いが威力は低い、強は成立範囲が狭い代わりに威力が高いという掴みかかるタイミングが同じだからこそ、使い分けとして機能するだけで、完成時間が違ってくると基本的には弱(短押し)で出すべきだが、相手がボーッとしてる時は強(長押し)でボるかという駆け引きになります。駆け引き? これが?

それはさておき、これは種別区分をなくした場合も違う理由で近しいことが発生します。ストのキャラを移植してきた場合、236+Pで弾速の遅い弱弾、弾速の早い強弾の使い分けはできますが、236+Kで出せた特殊ステップの実装方法は考えないといけません。弾の撃ち分けを1分類犠牲にしてボタンをこっちに回す? それとも、レバーコマンド自体を変えてしまうか? ゲームによっては4つ目の特殊ボタンという作戦も取れるでしょう。

そもそも、弱・中・強攻撃にパンチやキックといった共通項がないのですから、236+弱と236+中で同じ技が出なければいけない道理もありません。種別のみ分類が同じ技で強弱の幅を産めない、併用分類だと同じ技で強弱で幅をつける圧力が強い、とすると、強度のみ分類は割と自由が許されている立場だと言えます。弱だと弾を飛ばすけど、中だと踏み込みキックで、強だとジャンプ踵落としみたいな使い分けにしてもよい。ただし、幅と技数の両立はできません。選択式です。

僕が「ニュースタンダード」という言い方をしたのもこの点で、パンチ・キックによる種別分類って言わば、人体の感覚からみた分類なんですよ。現実的な格闘技を対応させるのであれば、そこは分別していたほうが直感的にわかりやすい。ところが、格闘ゲームって格闘試合を表現するにとどまらず、ファンタジックな超人同士のぶつかり合いの方面にも進化が進んだ分けです。そうすると、記号として人の形をしているけども、動きとしての現実味、人間味が薄れて行き、攻撃の機能――つまり、破壊力やリーチとか、振りの大きさとかだけが重要視されるようになり、種別が削ぎ落とされて強度だけで事足りる。格闘(技)のゲームから「格闘ゲーム」となり、順当に洗練された結果。と見ています。

であるがゆえに、ゲームへの落とし込み、あるいはゲームキャラクターを起こす時点で「格闘ゲームならこうなるよね」という感覚的なものが求められ、他の分類以上に実際の挙動を格闘ゲーム向けに分解する知識や能力が求められます。それでいくと「格闘ゲームを題材に組み入れたいけどわからへんからなー、なんか勉強できるサイトないかなー」とか陣内智則のコントの冒頭みたいな心構えの人には扱える代物ではありません。

つまり何が言いたいかと言えば、格闘技と格闘ゲームをリンクさせるのであれば、最低限攻撃はPとKに分類しておいたほうが後々潰しが効くし、強弱の分別をしておいた方が応用も効くから、後は乗っかりたいゲーム――スト6なり、鉄拳8なりをちょっと研究して似せるべきだったんですが、AとかBとか言い出した漫画があるんですよねぇ! でブチギレてたのが前回(冒頭ぶり二回目)でしたという話です。

おしまい。