虚木零児です。
夏といえばサメ、サメと言えば夏。鮫の夏。
というわけで、少し前にセールされていたMan Eaterをプレイしました。前々からやりたいやりたいと思っていたけど、なんだかんだで買わずに居たゲームでした。が、いざやってみたら楽しかったので記事に残しておくことにします。
https://store.steampowered.com/app/629820/Maneater/
力み過ぎで左腕の筋がちょっとだけ痛くなったりもしたけれど、私は元気です。
マンイーターはサメとなって海原で暴れ回る3Dアクションゲーム。
ストーリー的にはシャークハンターのスケアリー・ピートに親を殺されたサメとなり、彼に復讐を果たす物語ですね。
イメージとしては水中がメインのオープンワールドで、亀や魚、アザラシなどを食い散らかし、ミッションをこなすことでポイントを貯め、成長していく要素があります。途中から牙やボディの進化が行えるようになり、そちらも強化にポイントがあるので、とにかく食って食って食いまくることが肝要です。
自然生物たちは草食、雑食で積極的に狩りを襲わない生物だけではなく、肉食動物も登場します。成長するまではでっかいパイクに脅され、オニカマスにイジメられ、ワニから逃げながら薄汚い川の中で暮らすことになります。特に序盤のアリゲーターは怖い。身体が大きくなってくると市街地を流れる川、海、海水浴場、そして、沿岸部へと舞台が広がっていくにつれて敵もサメやシャチ、クジラへと成長していき、DLCコンテンツでは巨大なモササウルスめいたものと戦うことになります。まあ、その頃にはこっちも得体のしれない怪物に成長しているんですが。
タイトルがMan Eater(人食い生物)ということで、人間の生活圏へと侵入したタイミングで接触が開始。最初は浜辺で泳いでいたり、ボートで沖に出ている観光客を餌食にすることが可能です。ハンターに捕まった母親の腹から無理矢理引きずり出された主人公は最初に食った(というか、食い千切った)のがピートの腕というエリート人食い鮫なので人の味が忘れられないんですね!
人間自体はマンイーターに必要な栄養を広く含み、多くは泳ぎも鈍く、闘う術も持ちません。いわば、美味しい栄養源なのですが、食いまくると人食い鮫の脅威が知られてしまい、賞金がかかってハンターがやってきてしまいます。ハンターはジェットスキーやボートで追いかけ回した挙げ句、銃などで攻撃してくるので流石に手強い。体力がなくなって捕まるとフカヒレにされて終わり。
逆に暴れ回ってハンターの船を壊したり、人を食い散らかしているとネームドのハンターが出現するようになります。モブハンターよりは強いコイツらを倒すことで世間に悪名が轟き、人間側の警戒レベルが上がっていきます。最初は舐めてるので貧弱な装備で捕まえに来るのハンターたちも、有名(?)ハンターたちが撃退されるたびに武装を充実させていきます。途中から小型漁船で囲まれるようになるし、なんか爆発物を投げ込んでくるようになります。近づくだけでダメージを受ける電磁装置で防御するようになるのもすごい。
前述のボディなどの強化パーツの解放条件でもあるのでいずれは悪名を知らしめておきたいところです。数多のハンターを返り討ちにし、ポート・クロヴィスを恐怖のドン底に突き落とした人食いメガ・シャークとは俺のことだ!
プレイヤーはサメを操作しますが、ストーリーはスケアリー・ピートに密着取材するドキュメンタリー風の映像で語られることになります。父親をサメに食われ、並々ならぬ復讐心でサメを狩るピート。偏屈で乱暴な彼のもとには海洋生物の学者を目指す息子の姿もあり、彼は父親とはまた違った観点からサメを見ており、すれ違いが生じていました。
ピートの苛烈さは他のハンターと比べても異常で、母サメの腹を引き裂き(サメは胎生)引きずり出した主人公のヒレに傷をつけて「次にコイツを見かけてもわかるように」したりと作中人物からもドン引きされるような行動も少なくない。
まあ、そういう余計なことしてたから腕食われたんですけどね。
ストーリーが進むに連れてピートと主人公、マンイーターの衝突は激化していきます。もともとピートは自分の父親を食ったのは巨大なメガ・シャークと信じており、そいつへの復讐を誓っています。そのための準備として、船上を頑丈なケージで守っているのが特徴です。モブのハンターが狙ってくれと言わんばかりに舳先に立っているのとは大違い。
しかし、そこはサメが主役のゲームなので一度目の対決で手痛い敗北を喫することに。成長したサメに追い詰められ、片足と大事な一人息子を喪失し、半身に火傷を負ったピートは復讐心を更に滾らせプレイヤー操る人食い鮫との最終決戦にのめり込んいでいく……。
のだが、まあ、サブミッションクリアで語られる断片からピートはピートで碌でもないクソ野郎なのが面白い。イベント会場、若者文化に触れれば皮肉を言うし、何をしたのか裁判で負けてキレイなチャンネーのいるビーチには近づけない。最終的には海に向かって毒を撒きだし、魚雷を持ち出し、サメ狩人としての実績と息子を失った悲劇性で許されてるだけで普通にとんでもない奴である。
しかし、悪態をつき、哀愁を漂わせながらもはみ出し者として折り合いをつけていた所を人食いクソ・シャークにグチャグチャにされ、最後は自爆特攻で年老いた人生を閉じるドキュメンタリーのタイトルがゲームと同じマンイーターなのが堪らん。サメの話じゃんねえ!
しかも、ゲームなのでサメは無事っていうね。尊厳とか無茶苦茶だよ。
ダウンロードコンテンツでは番組自体が世の中に出回らなかったことが語られ、それがせめてもの救いと言った所だが、バイオメガ・シャークの姿を世に晒す訳にはいかない何者かの圧力というのが辛い。ピートを殺したのが普通のサメだったら、彼と彼の息子の最期は世間に放映されていたのだ。元奥さん兼、母親の方とかいらっしゃるんですよ!?
それはさておき、渾身の力作を握り潰された番男は陰謀論に傾倒。動画投稿サイトで"真実'に纏わる動画を配信、ついでにビジネスも行います。ピートを屠ったメガ・シャークはそいつに導かれるようにして軍を襲撃、ついには生物実験場へと乗り込んでいき、変異生物との戦い始める。その先に待ち受けているのは……放射能汚染されたモササウルスと思しき海の怪物、アトミック・リヴァイアサン! なんだこれ。
とまあ、原則的には"サメ映画"のゲーム化であり、シャークシミュレータの類ではない。主人公もホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメと言った凶暴所の特長を併せ持つミュータントモンスターシャークである。その証拠に泳ぎを止めても沈まない(サメは推進による浮力を得ないと沈む)し、泳ぎを止めても窒息しない(ホホジロザメ含み水流がないと呼吸が出来ない種がいる)。淡水も海水もお構いなし、シャチにもクジラとも張り合えるその姿は、まさしく僕たちが恐れた映画の怪物そのものである。
現実のサメは軟骨魚類の為、硬骨魚類の魚たちと比べると泳ぎが遅く、狩りは待ち伏せが主体。変温動物なので海水温で動きがかなり左右されるので、クジラはともかく、凶暴なシャチと戦うのは無謀と言っても良いレベルである。実際は、シャチが近くにいるとサメは狩りをやめてその場を立ち去る姿も観察されているんだとか。人間相手だと恐怖の対象であるサメだが、マジモンの海のギャング相手には逃げ出してしまうのは、学校とバイト先で饒舌度が違う人間みたいで物悲しいですね。
その点で行くと、Man Eaterの生態はだいぶ異なる。体格に任せてシャチとも海中ドッグファイトを行うし、強靭な尻尾の力を活かして、そこらを泳いでいたシュモクザメとかを飛び道具としてクジラにぶつけて攻撃したりします。確かにオナガザメの仲間は尻尾を叩きつけて狩りをする姿が目撃されているらしいですが、トスバッティングよろしくカメやサメを弾丸にして打ち出すのは流石にやらねえだろって感じあります。
まあ、もっとも、前述の各種進化パーツをつけると「骨の鎧で近づいた敵を切り裂く」、「牙やボディから電撃を放って痺れさせる」、「毒を放出して触れた相手の体力を奪う」などの攻撃が可能になっていくので、肉体を使って攻撃してるだけ現実的かもしれない。DLCでは謎の原子ビームを撃つようになるしな。
だから、海の底から迫りくる狡猾で獰猛な牙……! みたいなプレイにはなりません。相手の目をかいくぐって接近し、いきなり噛み付いて致命傷を負わせる現実的なサメアクションは不可能ではないまでも主流ではありません。
いわば、サメを主役にしたクライムオープンワールドゲーム。悪さしすぎると暴力装置が出てくるのもGTAとかにもありましたよね。退治に来たハンターたち相手に暴れに暴れて船を破壊、爆発から逃れたものの溺れているハンターを食い殺して、ゆうゆうと逃げていくとかそういうパニックホラー映画のサメになるようなゲームです。もちろん、クジラもシャチもハンターも海軍も油断していると死ねる程度の難易度はあるので、絶対無敵ってほどではないですが。
モチーフがモチーフだけに人は死ぬし、欠損表現なども出てくるので、万人におすすめできるゲームというわけではないんですが、そういう暴力やスプラッタなどに抵抗がなくて、ちょっとお馬鹿なサメ映画とか好きだったり、サメになりたい人はプレイしてみてもいいかもしれない。前述の通りスリルホラー的なサメになりたい人はちょっと満足できないかもしれませんが。