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2019年1月13日日曜日

かなめもはアニメ化したが、すべきではなかった

あけましておめでとうございます。虚木零児です。

2019年一発目の記事は、かれこれ十年前からしがみついている亡霊を退治することにしました。アニメ「かなめも」の肯定であります

某Twitterで僕をご存知の方の中には知っている人もいらっしゃるかもしれませんが、虚木零児はキミキスとかなめものアニメは存在していなかったことにしてきました。なぜかと言われると出来が酷いからなのですが、今回、放映から十年というこの節目の年にかなめもだけは存在を認める決意をしました。アニメというフォーマットにする以上、あんな出来でも仕方のない部分があったんだと思うことにしたのです。

かなめもは「まんがタイムきららMAX」に連載されていた4コママンガでした。きらら系列で、アニメ化のタイミングとしてはGA 芸術科アートデザインクラスけいおんとかとほぼ同時期になります。コミックスは全6巻。

先に挙げたけいおん、GA 芸術科アートデザインクラスと違い、かなめもはちょっと毒のあるコメディであり、なおかつ新聞専売所を舞台としています。女子高生たちのほんわかしたやり取りが中心の先の二作品と違い、新聞専売所の世知辛い事情などがネタになるブラックな作品なのです。実際、新聞社とクロスオーナーシップ関係にあるテレビ局でアニメーションを放映するのは結構勇気が必要なことだったのではないかと思います。

例えば、物語の冒頭、主人公である中町かなは唯一の同居人であった祖母を失います。呆然とするかなの前に突如として現れる遺品整理業者たち。家具などと一緒に捨てられてしまうと妄想したかなは家を飛び出し――紆余曲折を経て、物語の舞台となる風新新聞専売所へと転がり込むことになります。この時点でのかなは、住居を失い、保護者もいないと証言しながら住居を探していることになります。当然ながら、身元を担保するものはなにもありません。萌えキャラ然とした容姿と女子どもであることから見逃しそうになりますが、冷静に見れば歴とした不審人物であります。そんな不審人物に安易に住居を与えてしまう風新新聞専売所の所長代理の対応にはやや疑問が残ります。
実際、打ち合わせの段階でこの展開はヤバいかもという話は合った模様。

まあまあ、そこはフィクションだからと流したいところですが、実際問題として、新聞専売所に身元のはっきりしない不審人物が転がり込んで暮らしていたという実例はあった模様で、一時期は警察も目をつけていたとも噂されます。新聞社的にはあまりやってほしいネタではなかったことでしょう。
……一応、原作では最終回付近で「所長代理はかなの家庭の事情をある程度把握しており、両親の許可も得た上での住み込み開始だった」という描写が入ります。しっかりした小学生だなぁ……。

その後も「左(手にもった方)の新聞をお願いします」に対して右手の新聞を手渡そうとするなど公正中立を標榜する新聞社に真っ向から喧嘩をふっかけるようなネタがあれば、販売促進用のチケットを所内で横流しするネタが出てくるなど、読めば読むほど結構際どいネタのでてくる楽しい作品でした。

フィクションだと割り切れる度量があれば

ネタを抜いても、登場人物も全体的にエキセントリックでギリギリのラインを攻めてるような連中ばかり。主人公の純朴ながらも世間知らずな女子中学生を始めとし、年中アルコールが抜けない幼女性愛者(女性)、自由のない良家を嫌って駆け落ちしてきたパティシエ志望のお嬢様とその使用人(ガチ百合)や、雑草を食材にするほどの度を過ぎた吝嗇家のギャンブラー、しまいには不在の所長の代理を務める小学生(女児)まで出てくる始末であります。新聞専売所がそれでいいのか。
大体、ガチ百合は「声を押し殺すからつまらない」とか「夜は三回までしか相手してくれない」とかそういうことを言い出すのでね、公共の電波に乗っけていいものなのかという疑問が湧くわけですよ。読み返してみれば、幼女性愛者も酒が入っているときの発言はほとんどアウト(アルコールが抜けている間のみ綺麗)だしで、訳のわからないのほほんとしたアニオリキャラを出されて、全員が小奇麗な改変を食らったのも無理からぬことなのかなと思ったりします。
……まあ、原作では一切拾われなかったけどね。マリモ姉さん。

実際のところ、かなめもの原作で僕が面白いと感じていたエッセンスの多くはほとんどがテレビ向きじゃなく、アニメーションにするにあたって無難な方向に舵を切った結果が、毒にも薬にもならないなんとも微妙な作品だったのではないかと思います。
ミュージカル調の銭湯回とか何だったんでしょうね。十年経ってもおぼろげながらも覚えている以上、印象にだけは残っている訳ですが……面白くはなかったですよ。

さて、こんなところにしておきましょうか。
昔、アニメーションを見て(微妙だな)と思っていた人も、かなめもなんてこの記事で初めて知ったという人も一度、原作を読んでみてほしいと思います。

最後に。
キミキスのアニメはなかった。いいね?