虚木零児です。
Steamでぼんやりストアを眺めてたらTHE MISSING ――J.J.マクフィールドと追憶島――っていうゲームが出てたんですね。Steam上だと全部英語だったんで(お、洋ゲーかな?)とか思いながら購入、プレイしたんですよ。だから、CREDITでスタッフがほとんど日本人な上にMade In Osakaとか出てきたときはちょっと驚きましたね。まじかー。
■物語の始まり
ゲームは主人公のJ.J.マクフィールドが親友のエミリーと共に追憶島にキャンプに訪れるところからスタート。![]() |
▲タイトル画面。遠くを眺めているのがJ.J |
が、急な天候の悪化に続いて、突如として姿を消すエミリー。薄暗い森の中、エミリーを探して歩き回ると謎の怪物に追われるエミリーの姿を目撃する。
風雲急を告げる自体に戸惑いながらも、意を決してエミリーたちを追いかけるJ.Jを待ち受ける運命とは……。
■特異なゲーム性とどこか歪な世界
ゲーム自体は右へ右へと進んでいく横スクロールのアクションと思って良い。反射神経や操作技術を求められるタイプではなく、ちょっとした謎解きやパズル要素がある程度。難易度自体はそこまで高くはない。と思う。このゲームの独自性はJ.Jの異常とも言える不死性にある。
J.Jは割と早い段階で雷に打たれてしまう。全身が焼け焦げ、真っ黒い焼死体同然の姿に変わり果てる。自身の周囲が焼け焦げた花畑の中でのたうち回る姿は衝撃的で、それでいてどこか幻想的でもある。
![]() |
▲動物たちに見守られるJ.J |
動物たちが立ち去り、歩み始めたJ.Jは今まで抱き続けていたぬいぐるみを拾い上げるが、焼き尽くされたぬいぐるみは灰になって砕け散る。幼い頃から時を過ごしてきた友人を喪失したJ.Jは泣き崩れ、ゲームタイトルが表示され、本格的なゲームの開始が知らされるのである。
![]() |
▲泣き崩れるJ.Jとタイトル |
大型ファンに巻き込まれて五体がバラバラになって送風ダクトの中を通ってみたと思えば、回転ノコギリに巻き込まれた衝撃と吹き飛ばされた勢いで段差を登ったり、燃え盛る自分の身体を明かりにして暗闇の中を歩いたり。切り飛ばされた自分の身体を重しにする。あるいは歯車に巻き込んで止める。首だけになって狭い隙間に潜り込むといった非日常的な攻略のオンパレード。
![]() |
▲大型ファンに巻き込まれたバラバラに。 Eternal Championで見た |
![]() |
▲回転ノコギリに跳ね上げられて上へ。 |
■「自分自身であることを否定しない」ということ
ゲームを進めるにつれ、スマホのメッセンジャアプリが更新(リアルタイムではない様子なので、厳密には閲覧の開放かもしれない)されていき、J.Jを取り巻く環境が次第に明らかになっていく。親友であるエミリーとの関係、母親との確執、友人たちとの他愛のない交流に慕ってくる後輩、そして、大学でお世話になっている教授。最初は順風満帆に見えていた大学生活を思わせる会話の中に、次第に不穏なものが混ざり始め、それはやがてJ.Jの存在、延いてはこの血みどろの冒険が始まった理由へと収束していく。
ネタバレ大好きな俺には珍しく、今回、核心的な部分については伏せておく。ただはっきりと言えるのは、J.J自身の抱える苦悩が、この残虐でそれでいてどこか物悲しい冒険を生み出しており、ここでの経験とエミリーとの対話を通じて自分のあり方についての答えを見出していく、文字通りの『再生の物語』は今まで味わってきた中でも極上の体験だったということだ。
![]() |
▲自分自身であることを否定しなくても良い |
■否定せずにはおれない自分自身と向き合うこと
ただ、爽やかな読後感とは裏腹に俺の心には大きなシミが残っている。J.Jの苦悩とそこからの開放の物語は、俺自身の暗部と向き合うことを余儀なくした為だ。母親からの重圧、周囲の無理解、そして、理解してくれる親友とのすれ違い。まだ年若いJ.Jが苦しむ姿を見るに連れ、親に恵まれ、周囲に恵まれた自分の境遇がどれだけの幸運であるかを思い知る。
その一方で、俺にはJ.Jにとってのエミリーのような心を許せる存在はいない。自らを慮り、泣いてくれるような隣人はいない。
エンディングで抱き合うJ.Jとエミリーを見つめながら、俺の胸には仄暗い妬みの感情が芽生えを感じ、そして、自身の心の有り様に愕然とした。
自らが望んで歩み、人を振り払って進んだ孤独の道にも関わらず、同行人がいないことを嘆いている。こんな身勝手な話があっていいはずがない。歩幅を揃えることもせず、目的も気ままに定めた自分に誰もついてこないからと拗ねている。
ましてや、このゲームに興味を持ったのはとても人には言えない仄暗い感情によるものなのだから、J.Jと比してしまうと自分という存在のおぞましさは消してしまいたいほどに醜悪に映る。
ああ、俺もいつかJ.Jのように自分自身を受け入れられる日が来るのだろうか?
それとも――