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2026年11月4日水曜日

トンチキなのはアルジュンだけじゃなくて、ゲーム自体

虚木零児です。

アルジュンが追加されてずいぶん経ちましたね。何なんだ、ステゴロヨガ。この世界のヨガってのは手足が伸びたり炎を吹いたりする超技術のことなんですけど。ワールドツアーモードで俺はそう学びましたが?(ヨガの関係者は全員ダルシムスタイルなだけ)

冗談はさておきまして。このアルジュンのSA3だか、CAだかが「フザけてる」と騒ぎになっておりました。いや、盛りました。騒いでいる輩が一名ほどいらっしゃいました。全くおかしなことを言い出すものです。アルジュンがスト6で一番ふざけた、不自然な演出であると?

いや、そんな事はないんじゃねえかな。

アルジュン - 秩序の鬼神

ステゴロとヨガとインドの融合

素手(すて)の喧嘩(ごろ)だからステゴロ。実のところ、ストリートファイターなんて大体素手なんだからステゴロゲームなんですが、そういう文脈の中で使われるステゴロは派生した語義な訳です。格闘ゲームに出てくるステゴロは「何か系統だったスタイルを持たず、勝つためだったら何でも使う(ある種の)流派」というわけですね[独自研究]。我流では? みたいな気持ちはわかるんですが、我流で道場を開いた奴がいるゲームなので……お察しください。

さて、問題となったアルジュンのSA3はどんなもんかと言えば、相手の頭を両手で挟み込んで相手の平衡感覚を狂わせ、苦しんでいる相手の前で平然とダンスしながら、要所で強烈な衝撃でどんどん相手の感覚を幻惑し、最後に拳で殴り抜く技。かき乱された相手の視界ではアルジュンがブレて複数人に見えており、立ち並ぶ大男が悠然と踊りながら迫ってくるという……確かに、不自然に思う人はいるかも知れない。

とは言え、頭部に強烈な衝撃を見舞われれば一過性の複視に陥ることが無いとは言えないのだろうし、そのメカニズム自体はフィクションのハッタリとしては飛び抜けて突飛と言うほどではないと思われる。そのうえでやることがインド映画踏襲か何かで踊り始めるから面を喰らうだけで、そこに目を瞑り、外野の視点に立てば、強烈な一撃で跪いた相手に近づいて殴り飛ばすだけのシンプルなやり取りである。まあまあ、許容範囲じゃないですか?

踊ってないインド人を知らない(いや、知ってる)

ちなみにCAだと大きく流れが変わり、相手が跪いた隙に地面に息を吹き込み(!)、岩石を隆起させて自分を天高く持ち上げると(!)、太陽を背に腕を揺らめかせて神々しい姿で相手を魅了し(!)、余波で巻き上がった岩石を掴んで相手を押しつぶします。やめろ! 僕は正気だぞ!

やってることが戦国BASARAか何かという致命的な問題はあるものの、吐息を吹き込んで地面から岩を突き出させるのは必殺技としてやっていることの延長だし、ダンスと映画はインド人のアイデンティティに根を張っている[要出典]ことを思えば、何もおかしなことは無いと思いませんか? 思わない。はい、ですよね。

いや、待て待て。確かに格闘技というくくりにおいては誇張が過ぎる。しかしながら、ストリートファイター6というゲームを貫く世界観においてどうなのか? 問題はそこじゃないですか。だから、まだ結論を出すのは早い。他のキャラを見てからでも遅くはないはずです。

ルーク - ペイルライダー

ルークというキャラクターの表現は完璧

こういう時は主役格のキャラクターからと相場が決まっています。

さて、ストリートファイターシリーズって、リュウが築き上げたブランドへの反逆を試みてきたと思うんですよ[要出典]。アレックス(スト3)とアベル(スト4)はその時代で現実的な職業格闘家像を踏まえています。いや、大山倍達が下敷きであろうリュウ(スト2)が現実的ではないと言うと語弊があるんですが……現代では浮世離れして、地に足がついてない感じありますよね?

何にせよルークは「立ち技を主軸としつつも、グラップルにも対応できる総合格闘家」という、シリーズに居そうで居なかったスタイルを引っ提げ姿を表しました。実際、実用性はともかく、あの浴びせ蹴りとか好きですよ。実用性はともかく。

そういう意味では、ペイルライダーは長らく立ち技の時代が長かったストリートファイターにグラウンドを持ち込んだ意味で意義が深い。低姿勢からの足取りタックルでダウンを奪い、マウントポジションからパンチの連打で相手をマットに沈めるというのは近代の総合格闘、それこそUFCなどでも見られるシーンであり、かつてあのバーリトゥードをゲーム化したこともあるCAPCOMとしても看板の一つであるストリートファイターへの組み込みは悲願であったに違いない[要出典]ですからね。お見事ですよ。実際。

半端なリアリズムとそれ故の矛盾

ただ、悲しいかな手腕は確かでも現実感と外連味が打ち消し合っているのは否めない。

例えば、ルークはテイクダウンの際に相手が後頭部を打たないように手を添えてかばう形を取ります。実際、ルークの主戦場はコーナーポストであったり、金網であったりといった仕切りが仕掛けられているリングでしょうから、事故を防ぐという意味では重要な所作であります。ただ、これってストリートなんだよね……ルークの馬乗りパンチをSA3、CAらしく見せているのは最後の最後「全力ゥ!(ドーン」の部分で地面に走るひび割れです。このものすごいパンチをぶち込まれれば流石に沈黙せざるを得ない……という説得力こそが重要なのですが、最後にそんな衝撃をぶち込むのに何を庇う必要があんの? という。これに耐えられるんなら大丈夫だろ。ほら、不自然。

ジェイミー - 月牙叉炮

中国拳法らしく、目まぐるしいスピーディーな動き

ユンヤンの流れを組みながら、新時代を担うのに相応しい新しさを兼ね備えた男。それがジェイミーであります。技の演出的には「稽古の時間だ。構えな」と相手に手合わせを強要し、そこからの俊敏な攻防で相手を圧倒します。詠春拳などで形作られた目にも留まらぬ素早さのイメージと「尋常に『Fight!』の合図からの立ち合いならいざ知らず、懐に潜り込んでのやりあいであれば後れを取ることはない」という強烈なキャラクター付けが光る技と言えるでしょう。特にCAではスポーツでは許されない「相手が急所を叉手でえぐる」という切り札感が見事ですよね。フィニッシュした時の「終劇」演出など見た目の格好良さも高い。ふざけてる連中とは違いますよね……!

付き合わせるな

ンなワケねえだろ、莫迦がよ。

2026年現在でもスト6界では屈指の「相手に付き合ってもらわないと成立しない」技です。主役格キャラクターの一人がこの技を持ってると言うのがスト6からのメッセージと言っていいでしょう[要出典]。ジュリちゃんが真面目に手を出してるの見ると「そんなことするかな……」みたいな気持ちはありますよね。観虐氏が描くジュリだけだろ、あんな素直なのは。

また、セリフが「稽古」であることがロック系演出共通の「極端に高い再現性」に足を引っ張られるんですよね。本来なら、互いに死力を尽くして攻防を張り巡らせ、競い合うじゃないですか。稽古なんだからさ。それが毎回毎回同じ展開なんて、真面目にやれよ。はい、不自然。

……一応、つけ足しておくとこと「ストリートファイター」シリーズにおいてはこういう予定調和感を出さないよう、相手側の協力を要求しない技が多かったのに、ジェイミーが堂々と崩したという話なのでご理解はいただきたいです。

エドモンド本田 - 千秋楽

そう言えば相撲でしたね

エドモンド本田が力士なのは有名だとは思うんですけど、彼の戦い方が果たして相撲なのかは諸説あります。相撲は力と力をぶつけ合う競技であると同時に、単純なルール故に刹那に終わってしまう試合が特徴な訳です。足の裏以外がついたら終わりのルールで尻から落ちてくる技が許される理由ないんですよ。

とは言え、相撲ファイターが彼のアイデンティティなのでSA3はそれにちなんだものになっています。相手の回しを掴んだ本田が相手の足を地面につけたままぐるりと一周振り回すと摩擦で点いた火の軌跡が即席の土俵を作成。一気に身体を寄せてあわや寄り切り……となった所で本田は相手を投げ飛ばして決着をつけるという構成です。並み居る格闘家ですら踏み止まることすら出来ない本田の膂力、そして軽々と投げを打つ腕力が垣間見える必殺技と言うわけですな。

いえ、相撲ではありません

それこそが罠なんです。冷静に考えてください。ストリートファイターに土俵を割る、つまりはリングアウトは無いんです。つまり、土俵際だからと無理に踏ん張って、その力を利用されて反対側に叩きつけられるなんて莫迦のやることですよ。画面端に追い詰められそうだからというのはまだわかりますよ。でもその土俵ってそこの隈取りが勝手に引いたラインであって何の意味もないですよね?

これが極まるのがCA版で、こちらは投げ飛ばされた相手が身を翻して着地に成功するんですよ。何やってんだ、本田! しかし、それこそが相撲IQが作り上げた見事な罠。振り返った相手にはこちらに突っ込んでくる飛行力士の姿が!! 踏ん張らなければこんなことにはならなかったんですよ。

……なんで踏ん張ってんの?

ザンギエフ - ボリショイストームバスター

洗練されたショーとしてのプロレス

僕の記憶が確かならば、ザンギエフってロシアンレスリングの使い手だったんですよ。まあ、最初っからスクリューパイルドライバーっていう外連味あふれる大技を使ってたんでそうは見えないかも知れませんが、質実剛健・力こそ全ての豪快なスタイルでした。セリフ周りの筋肉信仰には名残があるとは思います。が、6ザンギはODスクリューの前で腕を回して観客を煽ったり、サイクロンラリアットでブレーンバスターの滞空中に指を立てたりと、すっかり昨今のショーレスリングに染まってしまいました。CAでザンギエフが両手を突き上げると炎が吹き上がるのも、至近距離からラリアットを食らった相手がザンギエフのアピール中に邪魔してこないのも全てはプロレスのフィニッシュムーブのお決まりだから。そこからのトゥキック、そして投げという流れは見事。今の時代はトゥキックからだよね。ヴァンガードプリンセスのリリスもそうだったもんね。あのゲームのスタナーの落とし込むは天才だと思ったね。

どこまでいってもプロレスですので

まあ、だから呑気にうずくまってないでさっさと立てやとか、そういう心無いセリフはやめていただきたいんですよ。考えてもみてください、あんな太い腕で首をぶっ叩かれて平然と動けるはずがありますか? そこで、K.O.されてないだけ立派なんですよ、彼らは。

……うるせえな、ピープルズエルボー程度には自然だろうが。

アレックス - ファイナルキャプチュード

気合は入っているよね

ザンギエフに続いて第四のプロレスキャラクター(*)としてSA3/CAで二種類、通常時/KO時で二種類の合計四種類という贅沢仕様。通常時SA3はフラッシュチョップで相手の背後を取り、テイクダウンして足関節を極めてからキャプチュードでリングに叩きつけ、CAはチョークスリーパーからの首投げでフィニッシュ! ……なのだが、これがKO演出になるとなぜかSA3はアキレス腱固めで、CAは胴締めスリーパーでトドメのため、明確なインパクトなくヌメッと終わる。鉄拳なんかでは顕著ですが、格闘ゲームの関節技は「折る」解釈をされる事が多いので、バキッと乾いた音が常でした。しかし、今回のアレックスにはありません。

とは言え、ゲームなんだから見せ場は作ってもらわないと……

実際、好き嫌いが分かれるとは思いますよ。ゴングでごまかされてますけど、明確なラストインパクトが無いことには変わりありませんからね。地味。それにスリーパーホールドで血流が途切れて落ちるのはまだわかるんですけど、アキレス腱固めで気を失うのはなんか違うと思いません? 普通はタップアウトの印象が強いんだけどな。実際、限界を超えてギブアップできずに……ってなると、それはもうリング上の事故になるんじゃ……?

*初登場時のアレックスはレスリングを取り入れた格闘家キャラであって、プロレスラーではなかったため、二人目のヒューゴ、三人目のエル・フォルテに続く四人目としました。異論は認める。ただ「H.W.A」(ヒュージ・レスリング・アーミー / Huge Wrestling Army)だからとギルとかカウントするのは流石に違うかな? とは。

ベガ - アンリミテッドサイコクラッシャー

サイコパワーは健在である

復活の魔神、ベガ様。ヘッドプレス、ダブルニープレスという謎の浮遊感にサイコパワーを加えたものサイコクラッシャーアタックな訳です。そこは力士がよくわからない理屈で飛んでくるのとは違い、かつてのように――具体的には全盛期の姿でミュータントとかと戦ってたとき――明確に空を飛んだりワープができるベガ様は、相手を掴んでから進路を変えて飛び上がることだって可能。かつてのナイトメアブースターもそうだった。さいこっぱぅわーなるものはよくわかりませんが、この得体の知れなさこそ魅力であります。

余裕をかましてる場合か?

CA版になると相手のパンチをひらりと躱して、伸ばした腕の上でポージング。力量差を見せつけた上で悠然と浮き上がってからのアンリミテッドサイコクラッシャーで倒してしまいます。これって映画とかではよくある、相手の武器を踏んづける奴のオマージュですよね。超然とした達人とかがやってるやつ。ヘッドプレスとかもそれをイメージして作られたという話もありますし、ベガというキャラクターをよく表しているとは思います。

まあ、CAってことは一定追い詰められてることになるんですけどね。そこに目を瞑ったとしても、相手の腕を踏み潰さず、伸ばした腕を引っ込められない程度に絶妙な力で押さえつけてるのもよくよく考えたら怪しいと思いますよね。いや、出来はするんでしょうけど。

マリーザ - アポロウーサ

闘士マリーザ、ここにあり

古代ギリシャの流れを汲むコロッセオを幼少期に幻視した過去を持ち、ジュエリーデザイナーとして活躍する傍ら、パンクラチオンで強敵と戦う女性ファイターでもあります。バーチャのジェフリー(我流)、劇場アニメ映画のフェイロン役でお馴染み、船木誠勝氏が旗揚げしたパンクラスなどに名前を残しながら、その実態はよくわかっていないパンクラチオンですが、ストリートファイターが満を持して導入。エンフォルドとかこれっぽい!

https://www.sportlibrary.org/501c3discusa7.html

とまあ、丸太みたいに立派な手足から繰り出される豪快な打撃は人間さえも軽々吹き飛ばすという見た目からでも感得できる彼女の本質がアポロウーサを可能とします。強烈なタックルで怯んだ相手を固く握りしめた拳で殴り飛ばすと、遥か彼方の壁面に激突するという冗談みたいな演出で、本当に相手が画面端に追い詰められているというとんでも技であります。そうはならんやろ、なっとるやろがい!

ストリートファイターの世界ってそういうモンなんですよ。パワチャ! って画面端から跳ね返ってくるんだから「弾けろぉ!」で反対側まで吹き飛んでいく。

……もうええでしょう。

スト6は不真面目で不自然なバケモン揃い

面白がってこんなに書きまくってから言うのもアレですが、ストリートファイター6は虚実織り交ぜた万国びっくり人間ショーなんです。いいですか、人間は電気ウナギと格闘しても発電能力は得られないし、竜巻を起こして風に乗ったりも出来ません。でも、そういうもんとして受け入れてきたじゃん。

SA3とCAにしてもそう。ベガがCAだと余裕出してくる話をしましたが、JPは逆でSA3だと、ツン……って爆破するのに、CAだと力入れて潰しに来るんですよ。そこはもうキャラクターの個性の領域なわけですよね。できるからやる。できることをやる。

だから、アルジュンが特別フザケてるんじゃないんですよ。スト6がフザケてるんです。アルジュンは目新しいふざけ方だから目立っているだけですよ。協力を求めないだけ、ルーク、本田、ジェイミーよりはマシなことは認めていただきたいですね。

大体はヌルヌルオイルマンよりはマシだしな。スライディーン!